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ブログ第五話 「空の産業革命に向けたロードマップ2018」とは
今後、ドローンの活用と発展はどのように進んでいくのでしょうか?
それを占うものに、「空の産業革命に向けたロードマップ」があります。官民合同のロードマップを経産省は発表していまが、これは、いわば国の政策指針となるものです。
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/robot/drone.html
補足資料によると「空の産業革命」とは、「小型無人機の飛行する領域がレベル1、2からレベル3、4へと広がり、多様な産業分野の幅広い用途に小型無人機が利用されるようになることで、小型無人機による空の活用を通じて、産業、経済、社会に変革をもたらすことと考えられる。将来的には、多数の自律飛行する小型無人機が空を飛び交って、都市における物流などの様々なサービスを提供する社会が実現することも想定される。」と定義されています。ドローンの活用と発展の技術レベルを分かり易く表にしたものがこれです。
表1 小型無人機の飛行レベル | |
レベル1 | 目視内での操縦飛行 |
レベル2 | 目視内での自動・自律飛行 |
レベル3 | 無人地帯※での目視外飛行(補助者の配置なし)
※ 第三者が立ち入る可能性の低い場所(山、海水域、河川・湖沼、森林等) |
レベル4 | 有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし) |
経産省
各レベルの飛行による利活用としては、例えば、表2のようなものが挙げられています。
表2 各レベルの飛行による利活用の具体例 | |
レベル1 | レベル2 |
・ 農薬散布
・ 映像コンテンツのための空撮 ・ 橋梁、送電線等のインフラ点検 等 |
・ 空中写真測量
・ ソーラーパネル等の設備の点検 等 |
レベル3 | レベル4 |
・ 離島や山間部への荷物配送
・ 被災状況の調査、行方不明者の捜索 ・ 長大なインフラの点検 ・ 河川測量 等 |
・ 都市の物流、警備
・ 発災直後の救助、避難誘導、消火活動の支援 ・ 都市部のインフラ点検 等 |
経産省
素直にみると、空の産業革命は、まず地方から進み、実証や経験値が上がり、十分なデータの蓄積や安全面での課題の克服を経て、都市部での活用が本格的に始まると考えられます。
- そしてレベル3、4に向けた技術開発として技術的課題が明確になっています。
Ⅰ 目視を代替する機能の実現 <遠隔からの機体識別と飛行位置把握>
ⅰ 機体状態の把握と対応
(位置、進路、姿勢、高度、速度、異常の有無等)⇒運航管理システムの構築。(UTMS)
ⅱ 周辺環境の把握と対応
(航空機、小型無人機、地形、樹木、構造物及び人等)の存在を把握し衝突を防止するとともに、周囲の気象(風、雨及び雲等)等の状況の変化を把握し運用制限からの逸脱を防止。⇒各種センサー等衝突回避技術の開発。
Ⅱ 第三者に対する安全性の確保
ⅰ 信頼性の確保
- 機体や装備品の信頼性の確保
- 通信の信頼性の確保
- 耐環境性の確保
ⅱ 危害の抑制
異常が発生したときの第三者への危害を抑制する。
- 異常発生時の飛行継続
- 異常発生時の飛行中断
- 落下及び衝突時の危害抑制
- その他の技術開発
小型無人機の利活用の拡大に向けては、安全性を確保するための技術開発のみならず、例えば、軽量かつ高容量(高エネルギー密度)なバッテリーや軽量かつ高性能なモーター等の技術開発による航続距離、航続時間及び最大積載重量(ペイロード)の向上や機体の大型化、非GPS環境下での飛行制御、機体及びデータ利用の知能化、自動離着陸及び充電技術などの技術開発にも取り組んでいくことが重要とされています。
- レベル3、4の飛行による利活用の本格化に向けての環境整備として、制度整備や実証環境の整備等に取り組みが具体的に紹介されています。
- 空の産業革命に向けた総合的な検討
ドローンハイウェイ構想等の論点整理を行う。その後、国際的な動向を把握し連携しつつ、各論について検討。
- 目視外、第三者上空飛行等の要件に関する検討。
- 機体の性能評価基準の策定
・物流や災害対応、インフラ点検に用いられる機体の性能評価基準を検討及び策定。
・団体等による機体の認証や国際標準化。
・目視外及び第三者上空等での飛行を安全かつ環境にも配慮して行えるようにする性能評価基準を研究開発。
- 無人航空機JISの策定
JISの策定に取り組むとともにISO等における国際標準化を推進。
- 操縦・運航管理に係る人材等の育成
・操縦技能に係る講習を行う団体等を航空局HPに掲載し受講を奨励。
・運航管理について、民間団体等の自主的取組等を通じて、安全な運航を確保できる人材や、機体、制御及びシステムの開発を担う技術者等の人材の育成。
- 航空機、無人航空機相互間の安全確保と調和
無人航空機相互間の安全確保と調和に向けた検討会(2018年3月20日)においてとりまとめられた飛行情報共有機能のあり方を踏まえ、2018年度は詳細設計、機能構築、試験運用を行い、2019年度飛行情報共有機能の運用開始。
- ドローン情報基盤システム
国土交通省では、無人航空機の飛行に関する許可・承認の円滑化に向け、ドローン情報基盤システム(DIPS: Drone/UAS Information Platform System)を開発。2018年度から電子申請サービスを開始。
今後、民間企業が提供するアプリケーションとも接続できるようにするためのインターフェースを整備。利便性の向上や高度化の実施。
- 福島ロボットテストフィールドの整備・活用
福島イノベーション・コースト構想の下、福島県南相馬市及び浪江町において、無人航空機や災害対応ロボット等の実証実験拠点である「福島ロボットテストフィールド」を2018年7月に一部開所。
レベル3の目視外飛行を日常的に行うことのできる拠点として運用。
レベル4に向けた陸上での飛行実証試験も行い、その成果が第三者上空飛行等に求める要件の検討にも資する。
2019年度には無人航空機の物流、インフラ点検、災害対応分野での性能評価基準に基づく試験に用いる風洞、インフラ構造物などを開所、拠点機能を拡充 。
- 国家戦略特区制度による「規制のサンドボックス」制度の創設。
国家戦略特区において、地域限定型「規制のサンドボックス」制度を創設し、高度で革新的な近未来技術に関連する実証実験を迅速かつ円滑に実現。
実証実験を実施する民間事業者に対し、各種相談や情報提供、手続の代行等を行う「ドローン実証ワンストップセンター」を拡充。
- 電波利用の環境整備
2016年度に改正した制度の運用を推進するとともに、目視外飛行の実現に向けた電波利用の在り方について、小型無人機の運航ルール・技術開発の進展や国際動向も踏まえて、調査・検討。
小型無人機による携帯電話等の上空利用について、その性能評価や国際標準化に対応し、国内制度等の整備と新制度の運用につなげる。
このロードマップを見ると、空の産業革命に対する国の政策や取組が理解し易く、しかも、具体的に説明されている事が分かります。世界市場の動向を見ながら近い将来を予測してみるのも楽しいかも知れませんね。